春を待ちわびるあの木のように僕の心は貴女のことで一杯で取るものが手に付かない僕は胸の内にあるこの花を咲かすことができるのだろうか貴女は立ち止まってこの花を見てくれるだろうか

老木

まだ僕らが小さかった頃いつも辺りが真っ暗になるまで君と遊んだ街外れの神社あれから二十余年の時が過ぎ二人は別々の人生を歩んでいてもう会うことも話すこともないでも今でもたまにここに来てもう一度あの頃に戻ってやり直すことができたら――そんなことを…

足跡

毎朝、餌を探しながら誰もまだ歩いていないパウダースノーの雪原にペタペタと足跡を付けるのがボクの楽しみなんだ

手を振る

遥か遠くで彼が大きく手を振っているわたしも小さく手を振って答えるここからでは彼の表情は分からないけどきっと優しい顔で笑っていてくれるに違いない忙しい毎日でも欠かさない今日も一日頑張るための二人の小さな決まりごと

空模様

嫌なことや悲しいことがあったときは涙を拭いて顔を上げてごらんほら 見て空はいつだって君のことを暖かく見守っていてくれるから

恋占い

当たるも八卦 当たらぬも八卦でもこの占いの結果はぜったい当たると信じてる

小春日和

ほのかに甘い梅香に誘われてふわりふわりと街を歩く足取り軽く 心も軽く何かいいことがありそうな予感に胸がときめく

いつもの景色

いつもと同じ景色のはずなのに今日はとても優しく暖かに見える今この瞬間君の目には何が映っているのだろう?

思い出の場所

大きな重機によって無残に破壊されてゆく木造校舎溢れる涙をぬぐってもう一度目の前の情景に目をやるここに学校があったことなんてすぐに忘れられてしまうに違いないでもわたしの心の中で在りし日の思い出は永遠に生き続ける

暮色

色彩が交差する空を横目に見ながら最後の積荷をトラックに詰め込むこれから車を走らせて目的地までおよそ四時間見知らぬ土地の夜空を想像しながらエンジンキーを回してアクセルを踏み込む暮色に染まりながら流れ流れる懐かしい街並み

シャンデリア

酔いを覚ますために烏龍茶片手に皆から離れフロアの柱にそっと背もたれたひんやりとした御影石の感触が心地よく思わずほっと息をついて天井を見上げるひとつひとつの小さな光が重なり合いフロア一面に暖かな光を注ぐシャンデリア自らは引き立て役に徹しなが…

パン

いつも開店一番に店に来てくれる君のために今日も暗いうちからぼくはパンを焼いているずっと気になっていた手の火傷の跡も勲章みたいなものだよと今なら笑える気がするパンを手渡すときに笑いかけてくれる君の顔を思い浮かべながらぼくはパン生地にぎゅっと…

観覧車

そこに行けば寂しさが増すだけだと頭では分かっているはずなのにわたしの足はいつもの場所に向かってしまう貴方と幾度も時間を過ごした大観覧車夜空に煌々と輝く冷たい光は満月でさえ霞ませてしまうその光が消えた瞬間に願い事をすると願いが叶うと言った貴…